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彼の給料は今時珍しい手渡し。
給料日になると彼は茶封筒に入った札束を、一枚一枚数えながら私に手渡してくれる。
「お疲れさま」といいつつ2人で乾杯。
私はこの昭和チックな儀式が大好きだ。
尊敬の念は、年下男の自尊心をじゅうぶんに満足させる。
自分よりキャリアのある年上女から尊敬されるのは大きな自信となり、男を成功へと導く。
将来彼をビッグな男にしたいなら、まずは尊敬の気持ちをことばと態度で示そう。
働かせたいならほめちぎれ 家事の項でもいったが、人間はほめられると「もっと頑張ろう」という気持ちが湧いてくる。
子どものころは箸の上げ下げができただけでもほめてもらえたが、大人になるとそう簡単にいかない。
年下男にかぎったことではないが、働く理由のひとつに「誰かに認められたい」というのがある。
幼いころ、じょうずに絵が描けたりすると母親が「よくできたね」と頭をなでてくれた。
人はあの優しい手のぬくもりを、いくつになっても忘れられないのではないだろうか。
銀座に名高い文豪が集う古びたスナックがある。
もう場所さえも忘れてしまったが、20代のころ、編集者に連れられて一度だけ訪れたことがある。
その店はこれといった特色がある店ではなかった。
酒だってごくふつうのウイスキーだし、酒の肴も乾きものばかり。
当時60代だった(と思う)ママは、どうみても美人とはほど遠いルックスに思えた。
だがオープンして40年近くになるが、客足がとだえたことがなく、店はいつも満員御礼だという。
私が行った時も、狭いカウンターは隣の客と肩が触れあうほど。
年がら年中、電話が鳴っており、ママは申し訳なさそうに「いっぱいなのよ。またね」というセリフをくり返す。
どうしてこの店がこんなに流行るのだろうと、私は薄い水割りを飲みながらママを観察していた。
30分もすると、その理由が明らかになった。
ママはとにかく人をほめるのがうまいのである。
それもその人がもっとも喜ぶツポを瞬時に探しだし、心底ほめるのだ。
一般に「先生」と呼ばれる種の人は、編集者からとってつけたようなお世辞をいわれることが多い。
へたなお世辞は気分を害すだけ。
だが心のこもったほめことばは、高価なプレゼントをもらうよりずっと嬉しい。
なによりも自分自身の才能を再確認させてくれる。
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